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Visions of Masochist
自分を律し、行き先を指し示す【Vision】。 しかし、行き先の分からない「背徳の幻想」が、私の中には存在する。
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「映画館」・デビュー【04】
 私が抵抗しないのがわかると、手はひとつひとつと増えていった。気がつけば、もう5本くらいの腕が私の身体中を撫で回し、私の右腕は、その中のひとつに引かれ、熱いものに、導かれた。


(硬い…それに熱い…。)


 私の周りには、満員電車のように10人ほどの男性が集まり、全員が私を見つめていた。生まれて初めてこんな視線を受け、私は異様な熱気で頭の中が白く煙り始める。
 自分のモノを触らせている30歳くらいの若い男。彼の男性自身の鉄のように固く、熱い感触が私の手を放すことを許さない。声も出せずに私は、そのまま5分ほど手のひらの上をつかまれ、彼自身を揉み込まされていた。


 背後の別の男はストッキングを力任せに何度も引っ張り下げようとする。左手でお尻の下側をかばう私をかまいもせず、何度も何度もショーツの中に手をいれ、私のお尻の穴を触りはじめていた。


 (こ・・・このままどんどんエスカレートしたら・・・?)


不安と、どうにでもなれ、という気持ちが交錯しながら時間は過ぎていった。


 やがて、どうしていいか分からずに下を向いている私を見つけ、常連らしき男性が近づく。


「席の方で休まない?」


 顔をあげ、周りの男性たちをもてあまし気味だった私は、無言で頷く。明らかに不満そうな男性たちに背を向け、席に座ると男性2人は私を挟み両隣に座った。すぐに、ゆっくりと私の両足を撫でまわしはじめる。


「きれいな肌をしてるね?時々きてるの?あんまり見かけないけど…」


何を聞かれても、どう返事をしていいかわからない。スクリーンでは、タイトルロールが流れ始めたためか、2人は私を本格的には責めなかったが、私の両手それぞれをもてあそび、かわるがわる自分自身を触らせたり、私の素肌を触ったりしていた。


「いままでエッチしたことある?しゃぶったことは?」


あまりに直接的な質問に、なんと答えていいのか分からず、無言で首を左右に振った。


「嬉しいなぁ、ほんとにしたことないの?」


 はしゃぎながら、嫌らしい顔で見られて、私は無意識に顔を背けた。世間話をしながら、本当は、


(あの手すりのところで男たちにかわるがわるしゃぶらされたい、一人一人に浣腸をねだらされて思いきり我慢させられたらどうだろう…)


とばかり考えていた。


 映画が終わり、一旦場内が明るくなった。映画館には不釣り合いと思った演歌が5分ほど場内に流れる。明るくなった客席で、何をしていいか分からないまま俯く時間に厭きた頃、ブザーが鳴り、暗闇が、あたりに戻り、次の映画が始まる。


「じゃ、始めてもらおうか」


男性は、すぐに大事なところを剥き出しにした。指先で軽く男性自身を愛撫すると、見る見るうちに屹立し、さっきまでの姿が嘘のように硬さを増す。自分自身と重ね合わせる。こんな間近で、欲情しているその器官を目にしたことは、今までもちろんあるわけがない。


以前、チャットで男性に教わったとおり、全体を唾液で湿らせると、舌を使いながら亀頭の部分に舌を伸ばして、なぞる。


「う…ッ、気持いいよ、ほんとに初めて?素質あるじゃない」


そういいながら、男は私の頭を撫でた。しゃぶっている間にも、別の男性が私のお尻を触っている。


 私の口中で、男性は少し動きが単調になると硬さが弱まる。同じ男性でも快感のツボがよくわからず、、私は根元を握ってこすり上げたり、強く吸いながら首を上下し、なんとか達してもらおうと必死だった。


 なんだか生暖かいゴムのような、スポンジのような感触の男性自身を舌で包み込むと、いままで味わったことのないような不思議な味と香りが口中を支配する。


「彼」の快感のツボにたまたま舌があたると、ぐっ、と力がこもり、その後に少し苦味のある液体がじわっ、とこぼれてきた。


 正直にいうと飲み干してしまうのには抵抗があった。


(私はいま女性なんだ…)


抵抗感と、そんな気持が入り混じり、気がつくと液体を啜りながらむせていた。


なぜだか、涙があふれた。


(汚される、ってこういうことなのなんだろうな・・・)


えぐみのある液体を、飲み込みながら、そう、思った。
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