ゴトッ・・・。
ドアの外に重い音が響いたが、快感のレールを走り出していた由梨はまだそれに気がつかない。
ゴトッ、ゴトッ・・・
足音がまた近づいてくる、やっと由梨が足音に気付いた瞬間、ドアはあけられていた。
(だ・・・!誰ッ!誰なの??)
よく日に焼けた体格のいい男がドアを開ける。
美恵は男性に近づき、目を瞑った。後ろ向きの由梨にはまだ見えない。
唇を合わせた軽い音が、かすかに由梨の耳に届く。
(えっ?キス・・・?どうして・・・。私をかわいがってくれるはずなのに・・・)
ドアの外に重い音が響いたが、快感のレールを走り出していた由梨はまだそれに気がつかない。
ゴトッ、ゴトッ・・・
足音がまた近づいてくる、やっと由梨が足音に気付いた瞬間、ドアはあけられていた。
(だ・・・!誰ッ!誰なの??)
よく日に焼けた体格のいい男がドアを開ける。
美恵は男性に近づき、目を瞑った。後ろ向きの由梨にはまだ見えない。
唇を合わせた軽い音が、かすかに由梨の耳に届く。
(えっ?キス・・・?どうして・・・。私をかわいがってくれるはずなのに・・・)
美恵のキスの相手が誰なのか、由梨は必死に想像しようとしたが、今まで美恵の周囲に男性の影など見えたことはなく、かすかな空気の揺れによって、男性の身体から発せられる香りから、相手を想像するしかない。
「これが美恵の子猫ちゃんかい?なかなかかわいい化粧だけど・・・やっぱり雄は雄だな。筋肉の使い方が、男だからね。まぁ・・・しかたないことかな。」
顎の下から、がっしりした大きな手の指先で、由梨の顔を上げさせると、男はにやり、と笑う。
「気持だけでもかわいい女になれよ。美恵みたいに跳ねっかえりになっちゃどうしようもないからさ」
乾いた笑い声が、由梨の耳を騒がせる。美恵は、何を考えているのだろう・・・?そしてこの男は、美恵の何・・・?由梨は自分の心に芽生えた不安に包まれ、身体から力が抜けるのを感じた。
「っうっ!!」
臀部に急に鋭い痛みを感じ、由梨はたまらず咳き込む。
「なんだその姿勢は・・・。腹に力を入れるんだよ・・・。おまえみたいな男女はな、気持が男になったら無価値さ。わかったかい?」
由梨は言葉の意味を完全には理解できなかったが、この男が女装の男性に接しなれていることだけはわかる。声の張りからすれば年は自分と同じか少し下のようだけれど、人の上に立つ者が放つオーラの強さは、自分とは比べ物にならない。
支配するものとされるものとの違いを、まざまざと見せ付けられ、声を出すのも忘れ、息を呑んで静寂にたたずむ。
「あっけに取られてるみたいだな。奴隷は敏感じゃなきゃいけない。自分の立場と仕えるべき人を嗅ぎ取る嗅覚が一番大事なんだ」
「ごめんなさい、まだ由梨は慣れてないだけなの」
美恵は由梨を庇う。しかし、その目におびえの色が見え出したことを由梨は気付かない。
「ん?美恵、ちょっとしつけがなってないんじゃないか?最近俺はおまえのことも少し甘やかしているかもしれないな・・・。少し、手本を見せてやろうか?」
「えっ・・・、待って、由梨の前では・・・」
「ん?それは、口答え、なのかな?」
「い、いいえっ・・・!そんなつもりなんて、あ、有りませんッ!」
急に美恵の口調が変わる。由梨の前で見せる由梨を先へ先へとどんどんリードしていく強さが、美恵の声からは全く感じられなくなっていく。
余裕が全くなくなった声のトーンに、由梨は戸惑うばかりだった。
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