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Visions of Masochist
自分を律し、行き先を指し示す【Vision】。 しかし、行き先の分からない「背徳の幻想」が、私の中には存在する。
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「映画館」・デビュー【07】
 しかたなく、両手で近くにいた男性自身を握り、しごきたててみる。念願が叶ったかのように、目を閉じて私の頭に手をかける男性。男性らしい反応に一瞬気が抜けた私は、両手がふさがり自由を失っていることを忘れていた。
 後ろから近づいた男性が、首筋に舌を這わせる。「あっ」と声にならない声を上げると同時に、首筋からわき上がるナメクジのような悪寒が身体を総毛立たせる。右手を放し、首筋から顔を払おうと後ろを向く。


 その瞬間、別の男性は節くれ立ったがっしりとした手のひらで、ストッキングをショーツもろとも一気に引き下げる。そのためらいのなさに、立ち上がろうとした身体には逆に拘束具をかけられ、中途半端な姿勢に固定されてしまう。


 両足を、開くことも、閉じることもできない。


もどかしさに、何とか身体を捩りながら、男達の手が伸びてこない空間に移動しようと試みる。しかし、そんな空しい抵抗すら、男達にとっては楽しみの一部でしかないのだろうか。さらに別の手が、キャミソールを強引に引き上げ、一瞬のうちに私はほとんど何も身にまとっていない身体を暗がりに晒す。


 もう、視線だけではない。男性達の汗ばんだ手のひらが、両手首を押さえ、突き出す形になった両胸を撫でる生暖かい空気に硬度を増した両胸の突起を人差し指と親指で甘く捻る。太腿の内側を、しつこく撫でる感触にいたたまれなくなり、脚を手から逃がすために揺らす度、ヒールがリノリウムの床を叩き、乾いた音を周囲に響かせていた。


「しゃぶってよ」


 ついに一人の男性が声をかける。


(このままじゃ・・・逃げられない・・・)


 その場の雰囲気が、私を脅迫するように感じた。私は、不自由な両脚を無理矢理たたみ、しゃがみこんで一人の男性自身を唇に含んでいく。他の男性の腕を避けながら、早く解放されたい一心で頭を振り立てた。でも、もう顎が疲れ、男性の、肝心なあと一息のラインが越えられない。


 上目遣いに男性を見る。目を閉じて、快感に身体を任せ始めているのを見て取った私は、熱く昂ぶる彼自身を、逆手で左手に包み込み、ゆっくりと、強く握って上下させる。


 やっと、「彼」のポイントを探り当てることができた。


 同じペースでストロークし続けると、やがて、興奮の絶頂を迎えるのが分かる。


(これ以上続けていると帰れなくなる・・・)


 一瞬だけ恍惚の表情を浮かべた男性が離れた隙に立ちあがり、私は自分の席に戻り、トイレに向かって着替えの入ったバッグを抱えて小走りにロビーに出て行く。


 「映画館デビュー」が、終わった。
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