知加子の足下に、私の戦利品が並んでいる。
【ベージュのストッキング】
どこででも手に入る何の変哲もないパッケージ。単なるエチケットのため、破れた時の予備に買ったものだろう。知加子はいつも薄いベージュのものしか身につけない。これも、その一つになるはずだった物。
【使いかけの制汗剤】
無香料のタイプ。たまたま、自分が普段使っているものと同じものだったが、携帯用の小さなもの。この噴射ノズルが毎日知加子の腋下へと向かっていたことを思うと、無性に自分のものにしたくなった。
【使い掛けの歯ブラシ】
ロッカーの中のポーチで見つけた。昼食後に毎日、知加子の手で使われていたもので、大分、ブラシがへたっている。
【ガムの包み紙】
知加子の退社後、デスク脇のくずかごから取り出したもの。衝動に耐えきれず、口に運んだ後のもの10枚。
【カーディガン】
知加子の席にかけてあったもの。昨日まで、昼間のエアコンの冷気に堪えかね、毎日何時間も知加子の身体を包んでいたもの。えもいわれぬ、知加子の香りをたっぷりと保持していた。
【ベージュのストッキング】
どこででも手に入る何の変哲もないパッケージ。単なるエチケットのため、破れた時の予備に買ったものだろう。知加子はいつも薄いベージュのものしか身につけない。これも、その一つになるはずだった物。
【使いかけの制汗剤】
無香料のタイプ。たまたま、自分が普段使っているものと同じものだったが、携帯用の小さなもの。この噴射ノズルが毎日知加子の腋下へと向かっていたことを思うと、無性に自分のものにしたくなった。
【使い掛けの歯ブラシ】
ロッカーの中のポーチで見つけた。昼食後に毎日、知加子の手で使われていたもので、大分、ブラシがへたっている。
【ガムの包み紙】
知加子の退社後、デスク脇のくずかごから取り出したもの。衝動に耐えきれず、口に運んだ後のもの10枚。
【カーディガン】
知加子の席にかけてあったもの。昨日まで、昼間のエアコンの冷気に堪えかね、毎日何時間も知加子の身体を包んでいたもの。えもいわれぬ、知加子の香りをたっぷりと保持していた。
一度、知加子の背後に回り、腰からニットの中に左手を差し入れ、そのままブラジャーのカップの中に滑り込ませると、左手で知加子の重量感のある左胸を掬う。
人差し指と親指で、蕾のような乳首を軽く挟み、知加子の抵抗を止め、しゃがんで床から「コレクション」をひとつひとつ拾い上げて入手方法を説明しながら、目の前に提示し、知加子に凝視させた。
「手を・・・、手をどけて!、触らないでよ!・・・、へ・・・、変態ッ・・・!どうして・・・、どうしてそんなことをするの・・・!」
変態性欲者。
知加子にとって性的な欲求の範囲が自分とは重なり合わない人種、つまり、自分には関わりあいのない未知の異性だった。
この数年間、机を並べ、家族よりも長い時間を毎日過ごしてきた同僚から、自分がまさかその欲望の標的にされているとはもちろん夢にも思ったことはない。
作業が終わらず困り果てていたとき、「遅くまでお疲れ様です、早く帰ってください」と笑顔で語りかけたのは、労いではなく、自分の屑かごを漁るためだったのか。
「信じられない・・・、ちょっと・・・おかしいんじゃない・・・?じ・・・、自分が何をしてるか、分かっているの・・・?」
「そんな格好をして、私の真似の・・・つもりなの?目的は何?これから私をどうしようと言うの!」
次第に昂ぶり、胸を掴まれていることも忘れ、語気を強めて知加子は背後の私を問いつめる。
何を問われても、私の答えは一つしかない。
「貴方が欲しかったから・・・。貴方の薫りに魅せられたから、ですよ、知加子さん・・・。それ以外に、何の理由が必要なんです・・・」
「薫りって、何よ・・・、意味わかんない・・・。こんなことをして、何になるの!?、縛って、無理矢理身体を触って、自分の変態行為を見せつけて、それで、それで一体何になるの!?教えてよ、ちゃんと、説明しなさいよ!!」
「・・・・・・」
もとより、この先のことなど、考えているはずもない。この、「夢のような」数時間が終われば、私の両腕の中から知加子はいなくなり、今左手に感じるどこまでも柔らかな知加子の乳房の感触も、汗にまみれた身体を愛おしく撫でることも、もう、二度とできるわけがない。
「ずっと、私の・・・、好きなようにさせて欲しい・・・」
知加子の耳元に顔を近づけ、呟く。
「は・・・、はあっ??・・・、何言ってるのよ・・・。どこの世界に、こんなことを、何度もやらせる女がいると言うの?大体、こんな方法でしか、女を抱けないなんて最低・・・、男の風上にも置けないじゃない・・・。そう、思わないの!?」
「・・・・・・」
何も、答えることは出来なかった。
私は、何を望みにこんなことを企てたのだろうか。本当の望みとは何だったのか。
他人に理解できるはずはない、と思ってはいた。
それは最初から分かっていたのだ。しかし、自分が何を望んでいたのか、そのことを問いつめられるまで、何かを思い描いていたわけでは無かった。ずっと・・・、と口に出してはみたものの、毎回このような方法で知加子を捕らえ、苦痛に苛むことを望んではいない。
苦しめたいのではなかった。
ただ、こうするより他に方法はなく、そして、このような状況になったから、私は自分のこの姿と、「コレクション」を知加子に明かした。
それがどれだけ気味が悪く、そしてどれだけ変態的な性衝動を提示しても、知加子が私の前から逃げられない状況、私が欲していたのはそれしか無かった。
自由を奪われた、自分が焦がれた女性が目の前にいる。
普通の男なら、性欲のままに犯すだろう。そして、花弁に肉茎を納め、好き放題に貪り、柔らかな身体を蹂躙すれば気が済むだろう。
私の猛りは、そのことを考えた途端、みるみる硬度を失い、例えようのない程の熱を発し続けていた衝動が、すっと姿を失っていった。
(何のために・・・?)
知加子を納得させるだけの「何か」が、必要だった。そして、その言葉が、見つからなかった。
辺りをただ、不思議な静寂が包んでいた。
人差し指と親指で、蕾のような乳首を軽く挟み、知加子の抵抗を止め、しゃがんで床から「コレクション」をひとつひとつ拾い上げて入手方法を説明しながら、目の前に提示し、知加子に凝視させた。
「手を・・・、手をどけて!、触らないでよ!・・・、へ・・・、変態ッ・・・!どうして・・・、どうしてそんなことをするの・・・!」
変態性欲者。
知加子にとって性的な欲求の範囲が自分とは重なり合わない人種、つまり、自分には関わりあいのない未知の異性だった。
この数年間、机を並べ、家族よりも長い時間を毎日過ごしてきた同僚から、自分がまさかその欲望の標的にされているとはもちろん夢にも思ったことはない。
作業が終わらず困り果てていたとき、「遅くまでお疲れ様です、早く帰ってください」と笑顔で語りかけたのは、労いではなく、自分の屑かごを漁るためだったのか。
「信じられない・・・、ちょっと・・・おかしいんじゃない・・・?じ・・・、自分が何をしてるか、分かっているの・・・?」
「そんな格好をして、私の真似の・・・つもりなの?目的は何?これから私をどうしようと言うの!」
次第に昂ぶり、胸を掴まれていることも忘れ、語気を強めて知加子は背後の私を問いつめる。
何を問われても、私の答えは一つしかない。
「貴方が欲しかったから・・・。貴方の薫りに魅せられたから、ですよ、知加子さん・・・。それ以外に、何の理由が必要なんです・・・」
「薫りって、何よ・・・、意味わかんない・・・。こんなことをして、何になるの!?、縛って、無理矢理身体を触って、自分の変態行為を見せつけて、それで、それで一体何になるの!?教えてよ、ちゃんと、説明しなさいよ!!」
「・・・・・・」
もとより、この先のことなど、考えているはずもない。この、「夢のような」数時間が終われば、私の両腕の中から知加子はいなくなり、今左手に感じるどこまでも柔らかな知加子の乳房の感触も、汗にまみれた身体を愛おしく撫でることも、もう、二度とできるわけがない。
「ずっと、私の・・・、好きなようにさせて欲しい・・・」
知加子の耳元に顔を近づけ、呟く。
「は・・・、はあっ??・・・、何言ってるのよ・・・。どこの世界に、こんなことを、何度もやらせる女がいると言うの?大体、こんな方法でしか、女を抱けないなんて最低・・・、男の風上にも置けないじゃない・・・。そう、思わないの!?」
「・・・・・・」
何も、答えることは出来なかった。
私は、何を望みにこんなことを企てたのだろうか。本当の望みとは何だったのか。
他人に理解できるはずはない、と思ってはいた。
それは最初から分かっていたのだ。しかし、自分が何を望んでいたのか、そのことを問いつめられるまで、何かを思い描いていたわけでは無かった。ずっと・・・、と口に出してはみたものの、毎回このような方法で知加子を捕らえ、苦痛に苛むことを望んではいない。
苦しめたいのではなかった。
ただ、こうするより他に方法はなく、そして、このような状況になったから、私は自分のこの姿と、「コレクション」を知加子に明かした。
それがどれだけ気味が悪く、そしてどれだけ変態的な性衝動を提示しても、知加子が私の前から逃げられない状況、私が欲していたのはそれしか無かった。
自由を奪われた、自分が焦がれた女性が目の前にいる。
普通の男なら、性欲のままに犯すだろう。そして、花弁に肉茎を納め、好き放題に貪り、柔らかな身体を蹂躙すれば気が済むだろう。
私の猛りは、そのことを考えた途端、みるみる硬度を失い、例えようのない程の熱を発し続けていた衝動が、すっと姿を失っていった。
(何のために・・・?)
知加子を納得させるだけの「何か」が、必要だった。そして、その言葉が、見つからなかった。
辺りをただ、不思議な静寂が包んでいた。
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