IRCクライアントソフト、そしてICQ。
簡単な設定でリアルタイムにメッセージをやりとりできるソフトウェアが、急激に拡がりを見せ始めていた。
少しアンテナが鋭い人々は、次々にバージョンアップするこれらのソフトウェアをすぐにダウンロードして自分のPCに常駐させ、やっと始まった「テレホーダイ」サービスを駆使しながら、友人同士や遠距離の恋人との連絡に使い始めた。
23時から翌朝まで続く、つかの間の疑似・常時接続環境。
インターネット=電話回線、だった時代、独占企業の保守政策によって課せられたこの制約は、「自由なネットコミュニケーション」の発達を阻害した、と今では評されている。
確かに、電話料金を節約するため、インターネットへの接続を毎日23時過ぎに集中させる人々が増えていた。長時間ネットに接続することで得る「何か」を強く求める人ほど、その傾向は強く、チャットで出会う人々とも、「同じ生活時間を共有している」意識が醸成されていたように思う。
一種異様なほどの性衝動を、集中して受け止め始めていた場所が、Netmeetingのコンタクトサーバである。
簡単な設定でリアルタイムにメッセージをやりとりできるソフトウェアが、急激に拡がりを見せ始めていた。
少しアンテナが鋭い人々は、次々にバージョンアップするこれらのソフトウェアをすぐにダウンロードして自分のPCに常駐させ、やっと始まった「テレホーダイ」サービスを駆使しながら、友人同士や遠距離の恋人との連絡に使い始めた。
23時から翌朝まで続く、つかの間の疑似・常時接続環境。
インターネット=電話回線、だった時代、独占企業の保守政策によって課せられたこの制約は、「自由なネットコミュニケーション」の発達を阻害した、と今では評されている。
確かに、電話料金を節約するため、インターネットへの接続を毎日23時過ぎに集中させる人々が増えていた。長時間ネットに接続することで得る「何か」を強く求める人ほど、その傾向は強く、チャットで出会う人々とも、「同じ生活時間を共有している」意識が醸成されていたように思う。
一種異様なほどの性衝動を、集中して受け止め始めていた場所が、Netmeetingのコンタクトサーバである。
Netmeetingは、簡単に手に入る「テレビ電話」を実現した初めてのメジャーなソフトウェアの一つであり、Skypeが登場するまでこの分野でのキラーソフトだったと思う。
「あの」Microsoftが提供し、しかも無料。適当に接続しただけで、世界中の「見知らぬ誰か」とリアルタイムでつながった瞬間の興奮は、それが当たり前になってしまった今では想像しにくいことだろう。
プロフィールに適当な言葉を入れ、コンタクトサーバに接続すると、リスト一杯に世界各国から話し相手を求める人々の名前が表示される。その中の一人を適当に選び、ダブルクリックすると、無遠慮な電話のベル音と供に、チャットウインドウが立ち上がり、「Hello!」の文字が表示された。
使い慣れない英語、しかも、しゃべる速度で流れていく会話がチャットが成り立つはずもなく、早々に切断ボタンを押されるか、全く会話ができないまま黙っているかのどちらかしか選べなかった。
ある日、私のプロフィールに入れておいた「Japan」の文字に興味をもった男性からコールを受けた。日本人女性に並々ならぬ興味を持つ外国人男性は多く、私が男性だと気づいた瞬間、接続は切断される。
うっとうしい位に何度も呼び出される中、何回目か、小さな動画の映るウィンドウが開き、そこに映る「彼自身」がいきなり目に入る。同時に、スピーカーからは、荒い息づかいが聞こえ始め、慌てて私はボリュームを最小にしなければならなかった。
(こんなに鮮明に見えるのか・・・)
私は、WebChatの世界から、Netmeetingへ急速に興味を奪われ、「仮面舞踏会」の後、失望だけをもたらしていた日々が、徐々に変わり始めていた。
「あの」Microsoftが提供し、しかも無料。適当に接続しただけで、世界中の「見知らぬ誰か」とリアルタイムでつながった瞬間の興奮は、それが当たり前になってしまった今では想像しにくいことだろう。
プロフィールに適当な言葉を入れ、コンタクトサーバに接続すると、リスト一杯に世界各国から話し相手を求める人々の名前が表示される。その中の一人を適当に選び、ダブルクリックすると、無遠慮な電話のベル音と供に、チャットウインドウが立ち上がり、「Hello!」の文字が表示された。
使い慣れない英語、しかも、しゃべる速度で流れていく会話がチャットが成り立つはずもなく、早々に切断ボタンを押されるか、全く会話ができないまま黙っているかのどちらかしか選べなかった。
ある日、私のプロフィールに入れておいた「Japan」の文字に興味をもった男性からコールを受けた。日本人女性に並々ならぬ興味を持つ外国人男性は多く、私が男性だと気づいた瞬間、接続は切断される。
うっとうしい位に何度も呼び出される中、何回目か、小さな動画の映るウィンドウが開き、そこに映る「彼自身」がいきなり目に入る。同時に、スピーカーからは、荒い息づかいが聞こえ始め、慌てて私はボリュームを最小にしなければならなかった。
(こんなに鮮明に見えるのか・・・)
私は、WebChatの世界から、Netmeetingへ急速に興味を奪われ、「仮面舞踏会」の後、失望だけをもたらしていた日々が、徐々に変わり始めていた。
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