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Visions of Masochist
自分を律し、行き先を指し示す【Vision】。 しかし、行き先の分からない「背徳の幻想」が、私の中には存在する。
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顔のない関係【05】
 【デジタルカメラからWebcamへ】

 静止した瞬間を切り取ることと、連続した時間そのものを伝えることとの間には、大きな隔たりがある。その境界線を越えようとした歴史が、例えば雑誌の付録についた「ソノシート」レコードであり、CD-ROMであり、DVDやテレビ番組連動のスペシャルWebサイトなのだろう。

 1枚の写真、数行の記事だけで伝えきれなかった動きや、描写しきれなかった空気感を伝えようとする思いを私も確かに持っていたから、伝わらないものを伝えようとする焦りと望みが、その裏に隠れていることが分かる。

 「放送とネットの融合」というのは少し前のハヤリコトバだったけれど、葉書や、せいぜいFAXやメールで繋がっていた関係性が、ネットワーク越しにリアルタイムな繋がりに変化した瞬間の感覚を自分の脳裏に焼き付けた人は、実はそう多くないのではないだろうか。

 融合とは、あるいは境界線を越えることの連続、なのかもしれない。

 デジタルカメラで撮った画像は、もちろん自分の顔が映らないように注意していたし、部屋に置いてあるものも一切映らないよう、白い壁の前を選んで撮影していた。

 アナルへの異物挿入や、ペニスへのクリップ責め、そして、自慰で達した瞬間、その証拠の精液を指につけて舐める画像・・・。

 「S女性」達のリクエストは絶えず新しいものに変わり、彼女達にとって「興味深いヤツ」でいるためには、そのリクエストにいかに忠実に答え続けるしか無い。

 次第に、それが面倒になっていったのは事実である。

 言われたとおりの道具を探し、構図を作り、アングルに気をつけながら数枚、セルフタイマーで写真を撮る。フロッピーディスク経由で画像を転送し、余計なものが映っていればトリミングし、やっと相手に届くまでには、早くても10分程度は必要だった。

 (Webcamだったら、準備しているところも、そのまま見てもらえる・・・。同じ時間ならもっといろんなことができるだろうし、S女性の方も楽しいはず・・・。
 写真は他人に渡したり、どこかのサイトにおもしろ半分に投稿されるかもしれないけど、Netmeetingのリアルタイム動画をそのまま記録して悪戯できる人なんて、多くないだろうし・・・)

 パソコンショップで、そのころは割に高級機種だったマイク付きのCCDカメラと、動画キャプチャーボードを選びながら、私の頭は自分が命じた行為を忠実に守る私の姿を見たS女性の反応が今までとどう変わるのか、それだけを考えていた。

 自宅に取り付けたCCDからは、思った以上に鮮明な画像が映し出され、現実の私を知っている人に、「面が割れる」危険性を抱くには十分だった。

 PCに接続したWebcamの映し出す方向に、白いシーツを垂らし、部屋の様子が見えないように準備し、その前で「私自身」が映し出される様子を、しばらく眺めながら、考えていた。

 (このままじゃ・・・、間違いなく顔がばれちゃうな・・・、動いてるうちにはどうやっても顔が入るだろうし・・・)

 音声と顔が一致したら、普通の感覚の持ち主なら、きっと「私」を特定できてしまうだろう。鮮明過ぎるが故に躊躇せずにはいられずにいたとき、たまたま、テレビで男性芸能人が何人もメイクとかつらをつけ、元の顔が全く分からないことに驚きの声を上げられているシーンを見た。

 パンティストッキングを履いてみる「禁断」から、さらなる境界線を越える時が、すぐそこにきていた。 

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