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Visions of Masochist
自分を律し、行き先を指し示す【Vision】。 しかし、行き先の分からない「背徳の幻想」が、私の中には存在する。
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顔のない関係【04】
 Webcamを手にする直前、私は帰宅して一人で過ごす時間のほとんどを、Netmeetingの世界で過ごすようになっていた。

 フランクフルトソーセージ、スキン、ベビーローション、洗濯ばさみ、ローター、そしてデジタルカメラ。妄想をかきたてる道具をいくつか準備すると、すぐに回線を繋ぎ、コンタクトサーバーに接続してずっと待機し続けた。

 早く帰宅出来た日は、21時過ぎから繋げることもあった。23時までは1~2時間あったけれど、1時間の通話料金は200円。数年前のダイヤルQ2を思えば比べものにならないくらい安く思えた。

 その頃私がPCを置いていた部屋にはテレビが無かったから、私はちょうどこの頃流行っていたテレビ番組を見た記憶がない。

 私は、完全にNetmeetingの世界にはまりこんでいた。
 交わされる会話はいくら変態的であっても、私は「一期一会」を心がけ、その甲斐あってか、やがて何人かの女性が、私の名前を見つけるとコールしてくれるようになった。

 「恵子」、と名乗る女性は、その、最初の女性である。

 「女性である」と言い切るためには、チャットの世界に必ず存在する女性を騙る男性、「ネカマ」でなかったのかを証明しないといけないかもしれない。

 「ネカマ」を非常に忌み嫌う男性(女性も)も多く、彼らはそれを排除するための質問を編み出しては性別チェックに明け暮れていたけれど、私がそういったチェックに興味が無かった。

 あるいは、それも、彼女にとっては新鮮に映ったのかもしれない。軽くたわいもない会話をした後、彼女は、一度だけマイクで自分の声を届けてくれた。

「彼女」であることを私は疑うことなく受け入れ、すぐに私達は「SとMの関係」で繋がることになる。

 彼女がチャットで指示を出し、私がマイクでそれに返答する。彼女は、自分が指示した行為を私が確実に行っているかどうかを「検証」するため、デジタルカメラでそれを撮影することを命じた。

 「お尻に、フランクフルトを入れてごらんなさい」

 「両手でお尻を開いて、フランクフルトを咥えているところを送りなさい」

 「今、自分のモノがどうなってるか説明しながら、オナニーしなさい」

 今日、ここに文字で書き留めると、陳腐で平板で、どうしてこんなことで興奮できるのか、と思われる方も多いだろう。

 真っ白なチャットの画面に、断続的に表示される彼女の名前と「命令」をつづった文字。

 自分の「今」の姿を見て、楽しんでいる女性が、ネットの向こうに確実に存在していた。

 【自分の姿を見られる】

 リアルの関係を志向する者が必ず経験することを、私はネット越しではあったけれど、初めてこの時経験することができたのである。

 すぐに、写真を撮って、加工してデータを送信して、という作業を楽にするため、Webcamを取り付けた。ここで、完全にリアルタイムで自分の姿を見ていただく環境が自宅に現れたことになる。

 しかし、その環境は、すぐに倒錯の度合いの高まった行為をもたらすことになった。

コメント
この記事へのコメント
趣味趣向
 あまりにハマりすぎると
他の事が全部灰色に見えて来ます。
何をしていても楽しくないんです。
友達とのくだらないおしゃべりも・・・。
女の子同士の買い物も・・・。
いや、もちろん中身のある会話。
目的のある買い物じゃなかったのですけど・・・。
はまり込んだネットから、どうやって抜け出たものか。
2006/07/12 (水) 02:13:18 | URL | さやか #DS51.JUo[ 編集]
はまりこむ一歩手前
よく、ネット世界と現実世界が混同されてしまう人、ネット世界の生活リズムのせいで現実世界の生活がぼろぼろになる人などが話題になります。
抜け出なければならない、と思うこと=はまりこんでいるままでいられない、ということなのかもしれませんね。
私もここまで自分の嗜好と性癖を展開するのは初めてなので、大分はまってることは間違いがありませんが・・・。
2006/07/19 (水) 00:14:15 | URL | cockshut #-[ 編集]
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