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Visions of Masochist
自分を律し、行き先を指し示す【Vision】。 しかし、行き先の分からない「背徳の幻想」が、私の中には存在する。
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ふたり 【03】
「もう少し、かわいい格好にしてあげるね」

 美恵は由梨の手首の縄を緩め、一旦戒めを解く。戸惑う由梨の額に軽くキスをすると後ろ手に縛りなおし、両肩を通したあと胸の下側を縛る縄に引っ掛け、もう1度背中の縄に掛けた。由梨の両胸がより強調され、拘束感が一段と厳しくなる姿勢だ。

 美恵はさらに太い縄を取り出すと、背中の結び目に硬く縄を捲きつけ、梁に向かって縄尻を投げる。

(吊られるんだ・・・)

 由梨が考えた瞬間、美恵は両腕に体重をかけて縄を一気に引く。
「ぐうッ!・・・うっ・・・」

 由梨は呼吸のリズムを急に狂わされてうめく。

 何秒か、目を閉じたまま呼吸を整えることに集中する。やっとどうにかその体勢でも呼吸のリズムを整えられるようになってから目を開けると、縄の高い個所に両手を掛けて、しなやかなラインを描く美恵の姿が見えた。それは、美恵にとっては奴隷を吊り上げる仕草でしかないけれど、由梨にとっては、まるで美恵の方が縄に吊られているようにも見える。

 真っ直ぐに美恵の両手から伸びる縄、そして、その先に奥歯を食いしめながら身体を一直線に伸ばした美恵の姿が連なり、縄の反対側に、自分がいる。

 美恵が握りしめている縄は、今自分の身体を厳しく戒めている縄そのものなのである。そこには、美恵との不思議な一体感が確かに存在していた。

 由梨は、呼吸を圧迫する麻縄と、興奮と共に胸を締め付ける美恵の感情とで、身体の内外をきつく締め付けられている。

「さぁ・・・、これでどうかしら?」

由梨はもう、床には爪先がやっと着く高さに吊られてしまった。親指に力を入れることで、自分のヒップが少し高い位置に上がることがわかる。ハイヒールが作り出す女性的なレッグラインにあこがれる由梨だが、自分のラインがどうなっているかを考えるまで、今は余裕がない。

「いい後姿よ。ひざの裏側あたりがとてもいやらしくて・・・」

 美恵に自分の心を見透かされたようで、由梨は驚く。コツ・・・コツ・・・と美恵の足音が近づき、美恵の薫りが由梨を包んで行く。

「ねえ、由梨」

両腕で由梨を柔らかく包み、首筋にキスをする。

「さっき私が言ったこと、わかるよね?私の全てが、貴方のためのもの」

「だから、私の、全てを、求めてね」

 美恵は短く、かみ締めるようにささやくと、由梨を柔らかく抱きしめた。

(美恵さん・・・)

 由梨が、うっとりと美恵の腕に持たれかかろうとした瞬間、美恵の腕の筋肉に鋭い硬直が走る。

「い、やっ!」

 由梨の袖に美恵の手がかかり、両胸に食い込んだ縄に力が伝わる。布がこすれる音と一緒に、スーツのボタンが引き千切れて、だらしなく広がる。破れたスーツの生地が、由梨の胸を撫でる。

「ねぇ由梨、今日は貴方のほんとの姿が見たいの。テストじゃなくてね、貴方の本当の気持を込めて、私の気持を受け止めてほしい。全神経を私に集中してほしい。全てを私に見せてほしいから。言ってることわかる?」

 由梨はゆっくり首を上下に振った。全ての神経を美恵に向けて、この一瞬を味わいつくしたい。そう思う。

 美恵はもう一本の縄を取り出し、由梨の右ひざの上に3回、縄をまきつけたあと、梁に通した。力を込めて縄を引っ張る。

「どこも隠して欲しくないんだ。もっと見せて!」

(あっ・・・待って・・・!)

 由梨はつぶやくが、口枷で声がでないことは自分でもわかっている。ひざを吊られれば、身体を支えるのは片方の爪先でしかない。ふくらはぎに力を込めて自分の身体を支えようとする由梨。

「由梨、力を込めてはだめ。足に筋肉が出ちゃうから。縄にもっと心をゆだねなさい」

由梨は頷いてそのとおりにしようとする。しかし、そうすることで縄目はより自分を締め付け、苦痛を送りこむ。

(苦しい・・・ッ)

「わかった?麻縄のいい感触と、自分の身体が自分を責める辛さを、もっと味わってね」

微笑む美恵に由梨はうなづくが、苦しさで身体中に汗がにじむ。

「さぁ、楽しんで・・・」

 タイトスカートが、右足があがったために、太ももの部分をきつく締め付ける。布が引き千切れそうなしわを寄せ、じりじりとずり上がっていく。

(だめ・・・)

 必死に右足を下げようとするが、頑丈な梁からつりさがった麻縄には無力だ。気がつくと美恵は由梨の身体にぴたりと寄り添っている。コロンの動物的な残留香と、かすかな汗の香りが由梨に届く。それは媚薬のように熱を帯びた香りとなって由梨を昂ぶらせてゆく。やがて美恵の両手が、由梨の胸を撫ではじめた。縄目の苦しさと、柔らかい手のひらの感触で、由梨は頭の中が白くなることを実感した。

(もっと快感が欲しい・・・もっと与えてほしい・・・)

 由梨は自分の欲求を吐き出し始めた。

「ウゥーっ・・・うぁっ・・・う・・・」

 途切れ途切れにうめき声をもらす由梨。穴のあいた口枷からは涎が流れ始め、由梨の顎をぬらし、白いスーツにかすかなグレーの染みを作り始める。

「気持ちいいの?素直になっていいのよ」

自分を包む理性の殻が崩れる音を由梨は感じた。

(もっと・・・もっと・・・、もっと・・・)

一直線に快楽の波に向かって由梨は走り出した。
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