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Visions of Masochist
自分を律し、行き先を指し示す【Vision】。 しかし、行き先の分からない「背徳の幻想」が、私の中には存在する。
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「女装M」×「男性S」【04】
 「わかりました、それなら一度、ホテルで調教することにしましょう。どこか、心当たりは?」

 「監禁」を自室ではなくホテルで受けることを了承してもらえてほっとする間もなく、私はそれをどこで実現すればいいのか知らないことに気づいた。

 私は女装しているとは言っても、昼間に外を歩いて女性にみえるほど美しくはなく、どうしても「女装している人」にしか見えない。ホテルに男性の姿で入り、中で女装するためには、ラブホテルをその場所にすることはできず、かといってまともなホテルはチェックインの際の記帳しなければならない。

 (「彼」に自分が男性であるときの素顔を見せないためにはどうしたら・・・?)

 急速に、「男性に女装Mとして調教される」ことが現実味を帯び、それに伴って準備しなければならないことが目の前に突きつけられていた。
 慌てて、デイユースできるビジネスホテルを探し始めたが、その日はそれ以上具体的に何かを進めることはできそうにない。翌日以降にまた連絡することを告げ、互いのメールアドレスを交換し、退出した。

 パソコンの電源を切り、蛍光灯に照らされた明るい部屋から寝室のドアを開け、暗闇の中に身体を横たえると、急速に様々なことが頭をよぎり始めた。

 (Sとしての経験がある男性の前で、女装Mとして調教される・・・、自由を奪われ、責められるんだ・・・)

 初めて女性の前で傅き、自分がMであることを告白できた日、そして、その女性の前で女装した自分を受け入れてもらったこと、縛られ、鞭で撲たれたこと・・・、その時点で私が持っていた「経験」はそれだけだった。「彼女」はその時まだ自分のS性について認識できていたわけではなかったし、まして私を「調教」するという段階には無かったはずだった。

 「SM行為を受け入れてもらう」ことと、「調教を受けることを了承する」ことには大きな違いがあるような気がした。

 そして、見知らぬ、しかも男性の前で、女装した男性マゾヒストとして調教を受けること、それがどんなにリスキーな行動なのか、理解していないわけではない。でも、どうしても、興味を止めることは私にはできなかった。

 (本当に・・・、苦痛を与えられて、私は・・・?)

 それが本当に自分が望んだことであるのは確かだった。しかし、調教によって自分の性的欲求が満たされるのかどうかについては確信がもてなかった。苦痛を与えられて、性的興奮を得ることが本当にできるのか、妄想を妄想のまま止めておいた方がよいのか、不安と防衛心が何度も心に突き刺さっていた。

 まだその頃、いわゆる「出会い系サイト」での様々な事件は報道されていなかったけれど、「監禁」を好む男性に会うこと自体、危険な嗜好と感じないはずがなかった。まして、女装することで私の逃げ道はさらに狭まるのだ。

 (これを逃したら・・・、この人を逃したら・・・、次に誰を・・・、どんな人ならいいのだろう・・・?)
 
 「彼」以外のいい加減な調子で次々と入室してくる男性のことを考えた。「性処理奴隷」なる言葉で、都合のいい自慰道具を欲しがる男性も、調教した相手の人数を誇らしげに語る男性もいた、でも、どれも、彼らと関係を深めたいとは思えなかったし、リスクが低いとも思えなかった。

 目を閉じていると、早くなった鼓動が余計意識させられた。

 「殻」を破る瞬間が訪れたことを、私はその時初めて意識していたのかもしれない。
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