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Visions of Masochist
自分を律し、行き先を指し示す【Vision】。 しかし、行き先の分からない「背徳の幻想」が、私の中には存在する。
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ふたり 【06】

「わからないなら、教えてやろう・・・、いつもこうだと思うなよ」

(あっ、なにを、っ・・・?)

 男は急にしゃがみこむと、由梨の足先に口づけをした。それは、由梨がいつも美恵にささげる「奴隷の印」そのものであった。温かくやわらかな男の舌が、自分の足指の間を往復していく。隠しようのない恥ずかしい匂いがそこから発せられているはずである。思わず由梨は身体を縮こませた。

 男の愛撫は、由梨の反応を無視しながら、しかし確実に快感のツボを探し当てながら続いた。

(私の身体の味を・・・味われているんだ・・・)

 由梨は羞恥と不思議な安心感を感じた。恥ずかしい部分に舌を這わせても、少しも嫌がらずにむしろ楽しいことでもするようなこの男の行為が、さっきまでの恐怖を消し去っていく。気がつくと、男の舌はすでに由梨のひざの裏側に達していた。

(どこまでするつもりなの・・・?)

由梨の気持ちをよそに、男はゆっくり、しかし確実に由梨の身体の一つ一つを自らの舌で味わっていくのだった。

(イヤっ・・・こんなの・・・!)

 由梨は、確実に自分の秘められた部分に近づく愛撫を恐れた。由梨になることで隠している自分の性、男性を暴かれる恐怖。いくら身支度を整えてはいても、その部分の男性の匂いは隠すべくもない。

(うッ!・・・だめっ、そこは・・・)

 由梨が少女の様に男の舌から逃げ惑う度に、ギッ・・・ギシッ・・・と縄が軋む。顔面は紅潮し、スーツの下の素肌が汗ばみ、ブラウスにとけこんでゆく。

「どうした?そんな格好をして今更恥ずかしいもないだろう」

(嫌だ・・・、恥ずかしい・・・いやっ・・・)

 男は由梨の首筋の後ろに息をふきかけ、耳元でささやく。

「由梨、御前は、どうしても知られたくないことを今から無理やり知られるんだ。怖いだろう?由梨は御前が作り上げた美しい女だ。簡単に崩れてしまっては面白くない・・・。どこまでこらえられるか、よく見せてもらおうか。美恵がどれだけ御前を仕込んだか、それでわかる」

(やめて・・・やめて・・・そんなところを・・・触らないで)

男の舌は、太ももの内側に吸い付いた。由梨の湿ったクロッチ部分はもう鼻先まで近づいている。

 もともと男性である由梨は、裸にされることに対して、「本物の」女性ほどの羞恥心を持てない。しかし、赤裸々にされればされるほど燃えてくるタイプのマゾヒストにただ単に厳しいだけの責めを続けても、心まで燃やし尽くすことはできない。男はそのことを知り尽くしていた。

 自分の能力可能領域を歩いている限り、決して自己をさらけ出さない由梨が、次第にこらえきれない熱に突き動かされていく。男の狙い通りである。美恵は、そんな光景を、由梨の目から読み取っていた。

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