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Visions of Masochist
自分を律し、行き先を指し示す【Vision】。 しかし、行き先の分からない「背徳の幻想」が、私の中には存在する。
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美しいカラダを手に入れて
 初めて、スキン・シェイプ、それから髪を、結構いい値段を出して買ってみた。

 いままで、フリーの素材を使ったり、自分でちょこちょこいじっていたけれど、どうにも納得いく顔にならないし、肌の色も今ひとつ。

 思い切ってお金を投入して、ちゃんとしたスキンを買ってみた。

 一気にきれいになった自分のアバターを見て、不思議と心がうきうきする感覚が、初めてわかった。
 自分の姿が美しい、と思った瞬間、その美しさへの執着はさらに強くなる。

 人と比べてみたい。

 集まる人々の中で一番綺麗だと言われたい。

 人が持っていないような髪型にしてみたい。

 何となく殺風景な肌には、アクセサリーをつけたくなる。

 残念ながら、誰のために綺麗になりたい、とは思わない。それは私が男性だからだろうか?それとも、女性が綺麗になりたい、と思うのは「特定の誰か」がいるから持つ感情に決まってる、と男性目線で勝手に決めつけているからなのだろうか。

 いずれにしても私の「SecondLife」は、女性として過ごすこと、それにつきるらしい。毎晩、深夜に「女」になってみては、現実世界での「男」のバランスをとっているような気がしないでもない。続けに続けたそんな日々がもう、10年になる。

 自分の中にいる「女」の部分は、美しいカラダを得たことで確実にリアリティを増している。それだけ、カラダの美しさ、そして、誰もが認める「一般的な」美しさの基準において、自分がどのくらいの位置にいるのかは「女」の部分にとって重要なことなのだろう。

 一般的な美しさなんて、私には関係ない。

 いままで私は、目の前にいる姿の美しさがすべてで、そして唯一無二だ、と「男」の私は何度も答えていた。

 それは、間違いではないけれど、「美しさ」の基準と自分の位置についての思いは、やっぱり「女」にしかわからない気持ちなんだろうな、と不思議と納得できた。

 男と女は、やっぱり、わかったようでわからない違いがあるものだ、と今更ながら、思う。
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