大きな幹線道路沿いの道を進み、キャンパスへの看板を確認して交差点を曲がる。
路面にじりじりと照りつける真夏の直射日光が、路面と車のボディーを灼き、路上の温度は天気予報の最高気温を更に上回っているのは確実だった。
その暑さと、昨日感じた興奮を、現実に見ることができるかもしれない興奮に軽いめまいを感じながら、近くのコンビニの前でバイクを停める。
キャンパスまでは、歩いて5分ほどだった。
路面にじりじりと照りつける真夏の直射日光が、路面と車のボディーを灼き、路上の温度は天気予報の最高気温を更に上回っているのは確実だった。
その暑さと、昨日感じた興奮を、現実に見ることができるかもしれない興奮に軽いめまいを感じながら、近くのコンビニの前でバイクを停める。
キャンパスまでは、歩いて5分ほどだった。
初めて見るキャンパス。勝手が分からないだけに、門を通り抜ける時はさすがに緊張した。夏休みの夕方、まばらな学生達の中を、さも用事があるかのように足早に通り過ぎる。
すぐに、キャンパスの案内図を見つけた。
(体育館・・・、どこに・・・)
門からすぐ奥に、体育館の表示を見つける。
男女のバレーボール部が練習をしているはずの体育館。今日も、「彼」と「彼女」は、用具庫で、行為をしているだろうか。
夏の熱気を全身に浴び、じっとりと汗が浮いている。
ケヤキの並木道を少し歩くと、体育館が見えた。
中から、かけ声が聞こえる。
のぞき込みたい気持を抑え、辺りを素早く見回す。練習の合間らしい手持ちぶさたな男子部員と目が合った。慌てて視線をそらす。
(どうする・・・?中を見るわけにも、いかないだろうし・・・)
小学校や中学校と違って、一般の学生が運動部の練習を見に来ることなど、あるわけも無かったから、不審者扱いされないためには、素知らぬ顔をして、近くを通り過ぎるくらいしかできない。
体育館の横にさしかかり、通り過ぎてしまうまでのほんの数十メートルの間を、耳を澄ませ、中から女性の声が聞こえるか確認する。
(いる・・・。やっぱり、男女一緒に練習しているんだ・・・)
そのまま、隣の棟まで、真っ直ぐに歩いた。
頭の中には、練習が終わった後、部員のいなくなった用具庫にたたずむ二人の姿が見えた。
汗で濡れたユニフォーム姿で、仁王立ちしている女性と、正座してうなだれる男性。
(見てみたい・・・)
そう思う気持ちは止めることができなかった。
少し歩くと、学生生協の建物があった。
暇つぶし用に持ってきた文庫本を開き、しばらくそこで待ってみることにした。
Sの嗜好を持つ女性、そして、SM行為を行う男女、私は、自分の目で、実在しているその人物を、どうしても見てみたかった。
1時間ほど、ぼんやりとそこで過ごしただろうか。
練習が一段落したらしく、バレーボール部のユニフォーム姿の男子部員が、飲み物を買いに来た。急いで立ち上がり、もう一度、元来た道を歩いて体育館に向かう。
体育館の周りには、20人ほどの男子部員が見えた。中からは、まだ女子部員のかけ声が聞こえる。練習は、まだ終わっていないようだった。
(一緒に終わるわけじゃないのか・・・)
残念に思いながら、辺りで休んでいる部員達を素早く眺める。昨日の「彼」は、この中の誰なのだろうか。「声」から体格を想像するのは、難しかった。
少し離れたところから、それとなく部員を見ていた。一人、また、こっちを見て少し怪訝そうな顔をしている。
(まずいな・・・なんか、不審がられると面倒だ・・・)
これ以上ここにいることはあまり得策とは思えなかった。
来たときと同じように、足早に門を通り抜け、バイクのエンジンを掛け、幹線道路に出る。排気ガスと熱気に塗れながら、今日の練習が終わった後の彼と彼女を想い、妄想を募らせた。
・足下に跪づき、伏して上位から見下される私
・汗に濡れた身体、ゆったりと腰を掛け、脚を組んで見下ろされる私
・ほら・・・、と促され、目を閉じて、足先に唇を寄せていく
・裸にされ、体育館の壁面に打ち付けられたバーに、両手を広げて肘と手首をくくりつけられ、恐怖の表情が浮かぶ感覚
・左手でバレーボールをトスし、思い切りスパイクする仕草を何度も繰り返す女性
・身体中にボールを受けた後、拘束を解かれ、床に崩れ落ちる私
・真っ赤になった素肌を撫でながら、イチジク浣腸をいくつも取り出す女性
・皮膚全体が発する熱と、身体の芯まで染みこんでくる痛みの中であえぐ私を軽々と膝上に抱え、お尻に浣腸を施していく女性
バイクに乗りながら、前頭葉を支配していく妄想。
私は、心の底から、そんな「彼女」を得た「彼」の境遇を羨んだ。
(私なら、もっと、彼女を満足させてあげられるのに・・・)
考えても仕方のないことを想いながら、強い西日に向かって、私は心の火照りをとどめることができないでいた。
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