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Visions of Masochist
自分を律し、行き先を指し示す【Vision】。 しかし、行き先の分からない「背徳の幻想」が、私の中には存在する。
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「仮面舞踏会」【01】
 ツーショットダイヤルから離れて少したったころ、自宅でインターネットを使いはじめた。


 まだ日本語版のyahooも試験運用だった頃、あちこちのリンクを伝ってたどりつく「ホームページ」の大半は、取り立てて内容のない自己紹介ページばかり。私は、ひたすら「SM」の世界を探すために、ネット空間の中を彷徨い続けていた。
 村上直之氏Bondage Paradiseくらいしか、日本語で書かれたFemdom系のホームページは無かったから、外国サイトを次々と巡っては、無修正の画像を探しあさった。


 日本のSMサークルの画像が外国のサイトに掲載されているのを発見した時は、わずか数キロビット/秒しか出ない回線で、一枚一枚お気に入りの画像を収集する作業を繰り返した。


そんな夜が一ヶ月ほど、毎晩続いていた。


 「そこ」を見つけた夜のことは、今でもはっきり覚えている。アダルト系サイトに寛容なプロバイダのリンク集の中をぽつりぽつりとたどっていくと、「仮面舞踏会」と名付けられたページを見つけた。
 丁寧に作り込まれたトップページの画像と、当時は珍しかったSM愛好者だけが集まるチャットルームは、それだけでも斬新だった。そして、チャットルームはパスワードで管理された会員制のもので、当時公開されていたチャットルームの作りとは一線を画していた。


(これ・・・どんな人が作ったんだろう・・・?)


興味は募った。


 すぐ、チャットルームに入室する。登録制ではあったが、外から見学することだけはすぐできた。
 黒いバックに、黄色と紫の文字が、交互に表示されている。目に飛び込んできたのは、数人の男女が、たわいもない雑談を交わしている光景。そして、黄色い文字を使った数名の中に、明らかに女性の言葉遣いををする一人がいた。


(Sの女性、って、本当に、いるんだ・・・)


 今で言う「チャットSM」をしていたわけではなく、本当に、たわいもない雑談だった。けれど、自分が嗜虐嗜好を持つ女であることを周囲に明かしつつ、SMの趣味を持つ者たちの中で一人楽しげに会話を交わす光景は、私にとっては圧倒的なリアリティを持って迫ってきた。


 慌てて会員登録の画面を探す。
S男性の登録は既に定員に達していたが、たまたま、公開直後だったせいか、M男性だけはまだ会員登録が可能だった。私は、S女性や、その他の嗜好を持つSM愛好家の方と、一緒に時間を過ごし、会話だけでもしてみたい、その一心だった。主宰者への会員登録希望のコメント記入スペースは、その想いを連ねた言葉で、あっという間に満たされる。


数日後、入室パスワードが届いた。


 私はここで過ごした1年ちょっとの時間を、一生忘れない。出会った人々のことを、いつまでも覚えている。


 リアルタイムでSM嗜好を持つ人々が集い、会話に花を咲かせ、お互いのことを段々に認識していく日々。私は、毎晩、その魅力の虜になった。


 私を始めて奴隷と呼んでくれたご主人様とは、ここが無ければ知り合うことはなかった。閉鎖の日、最後に立ち会えなかったことを今でも後悔している。


 そして、出会った人々が、今、何をしているのか、今になってもずっと気にかかっている。



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