女装をする人たちにとって、自分が「女」になるためのスイッチのようなものがあると思う。
私にとって最大のスイッチは、「薫り」。
服を着たり、化粧をするだけで完全な女性になれるほど美しくない私にとって、目を閉じていても自分に「女」を感じさせてくれるのが「薫り」だった。
私にとって最大のスイッチは、「薫り」。
服を着たり、化粧をするだけで完全な女性になれるほど美しくない私にとって、目を閉じていても自分に「女」を感じさせてくれるのが「薫り」だった。
初めて使ったのは、どこにでも売っている制汗剤。
今でこそ、男性用の制汗剤も増えてきたけれど、少し前、制汗剤を使うのは女性だけだったから、自分の身体の匂いを隠すために使うことを想像しただけで、胸が高鳴ったことを覚えている。
化粧の前に身体を整える時、もちろん両腋の毛は全て剃毛する。「いつも」のように雑に、ではなく、洗い立てのタオルを使って全身を優しく拭いていく。
ベビーローションを両手にとって、両脚に乳液を伸ばし、徐々に全身に広げていく。自分の手で、自分の身体を愛撫するような気持ちを込めてその行為を続けると、少しずつ私の「スイッチ」を入れる準備は整っていく。
ヘアバンドを着け、何度やってもなかなか自分なりの「自分の顔」をつくることがうまくならないメイクを施す。うまくない、とは言っても、全てを終わらせるまでには、ゆうに1時間はかかる。
下着を身につけ、最後に、丁寧に肌を露わにした腋下にスプレーを吹きかける。それだけで、一気に昂奮が高まった。
軽く動く度に、自分の身体から、「女」の薫りが立ち上がる。下着やメイクだけでは感じられなかった感覚が、私の心を貫き始める。
(ああ・・・私、女になってる・・・)
女性なら誰もがする行為。そして、それほど楽しいとは思えない行為が、私には最高のスイッチになる。私の身体から立ち上る薫りは、紛れもなく、すれ違ったり、電車でたまたま隣り合った女性から発されるものと同じだった。
冷静に鏡を見たら、また、スイッチが切れてしまうかもしれない。私は、醒めたくない夢をみているかのように、メイクの間自分が見つめていた鏡を伏せ、ゆっくりと床に寝転がる。
机の上に並べておいたピンク色のローターを、手にとり、ストッキングの間からショーツの中に入れて、一番敏感な部分にあたるようにして、留め置いた。
あと2つのローターを、両方のブラジャーのカップの中に入れ、3つのコントローラーを、お腹の上に置いて、しばらく、妄想の世界に耽っていく。
(着衣のまま、無理矢理、こんなものを入れられてしまった私・・・、もしもスイッチを入れられたら・・・)
「女性」の性感なら、いきなり敏感な3カ所を刺激されて、平気でいられるはずはないだろう。恐怖にも似た昂奮を、私は自分に施していた。
「男性」の性感は、直接的で、真っ直ぐな刺激を与えれば、容易に絶頂に達してしまう。「女」でいるためには、できるだけ刺激を曲線的に、緩急をつけて焦らし、長い時間を掛けて身体をとろ火にかけるように熱していきたい。
自分で自分を女として責めていくのには、「薫り」が不可欠だった。
それは、私が「男」としても、女性の薫りを何よりも好むことと、無関係ではないと思う。男として持っている妄想が、自分を「女」にするための最大の道具になる。
不思議だけれど、それは私だけが知る「快楽の方程式」の一つの解。
そして、「薫り」はより本当の女性が身につけるモノに変わっていき、また、最後に、どうしてもたどり着けない壁にぶつかることになる。
女性の薫り。
私はそれに惹きつけられ、虜にさせられた奴隷なのかもしれない。
今でこそ、男性用の制汗剤も増えてきたけれど、少し前、制汗剤を使うのは女性だけだったから、自分の身体の匂いを隠すために使うことを想像しただけで、胸が高鳴ったことを覚えている。
化粧の前に身体を整える時、もちろん両腋の毛は全て剃毛する。「いつも」のように雑に、ではなく、洗い立てのタオルを使って全身を優しく拭いていく。
ベビーローションを両手にとって、両脚に乳液を伸ばし、徐々に全身に広げていく。自分の手で、自分の身体を愛撫するような気持ちを込めてその行為を続けると、少しずつ私の「スイッチ」を入れる準備は整っていく。
ヘアバンドを着け、何度やってもなかなか自分なりの「自分の顔」をつくることがうまくならないメイクを施す。うまくない、とは言っても、全てを終わらせるまでには、ゆうに1時間はかかる。
下着を身につけ、最後に、丁寧に肌を露わにした腋下にスプレーを吹きかける。それだけで、一気に昂奮が高まった。
軽く動く度に、自分の身体から、「女」の薫りが立ち上がる。下着やメイクだけでは感じられなかった感覚が、私の心を貫き始める。
(ああ・・・私、女になってる・・・)
女性なら誰もがする行為。そして、それほど楽しいとは思えない行為が、私には最高のスイッチになる。私の身体から立ち上る薫りは、紛れもなく、すれ違ったり、電車でたまたま隣り合った女性から発されるものと同じだった。
冷静に鏡を見たら、また、スイッチが切れてしまうかもしれない。私は、醒めたくない夢をみているかのように、メイクの間自分が見つめていた鏡を伏せ、ゆっくりと床に寝転がる。
机の上に並べておいたピンク色のローターを、手にとり、ストッキングの間からショーツの中に入れて、一番敏感な部分にあたるようにして、留め置いた。
あと2つのローターを、両方のブラジャーのカップの中に入れ、3つのコントローラーを、お腹の上に置いて、しばらく、妄想の世界に耽っていく。
(着衣のまま、無理矢理、こんなものを入れられてしまった私・・・、もしもスイッチを入れられたら・・・)
「女性」の性感なら、いきなり敏感な3カ所を刺激されて、平気でいられるはずはないだろう。恐怖にも似た昂奮を、私は自分に施していた。
「男性」の性感は、直接的で、真っ直ぐな刺激を与えれば、容易に絶頂に達してしまう。「女」でいるためには、できるだけ刺激を曲線的に、緩急をつけて焦らし、長い時間を掛けて身体をとろ火にかけるように熱していきたい。
自分で自分を女として責めていくのには、「薫り」が不可欠だった。
それは、私が「男」としても、女性の薫りを何よりも好むことと、無関係ではないと思う。男として持っている妄想が、自分を「女」にするための最大の道具になる。
不思議だけれど、それは私だけが知る「快楽の方程式」の一つの解。
そして、「薫り」はより本当の女性が身につけるモノに変わっていき、また、最後に、どうしてもたどり着けない壁にぶつかることになる。
女性の薫り。
私はそれに惹きつけられ、虜にさせられた奴隷なのかもしれない。
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