一度、知加子から離れ、数日前から運び込んでいた段ボール箱に手をかける。梱包を解き、中身を取り出して眺める。
(ふふ・・・、探したんだよ、これ・・・。おかげで限定モノを手に入れるのにどれだけ努力が必要かっ、よく分かったけれど、ね・・・)
手にとって、ゆっくりと知加子の元に向かう。最低限の隙間を空けて並んでいる背の高い電動書庫の横を通り抜けると、ぼんやりと非常灯の広い光りが、知加子の影を壁に投射しているのがところどころから見える。
苦しそうに身もだえする姿が視界に入り、それが次第に大きくなっていく。段ボールから取り出した袋から中身を取りだし、彼女の目の前の高さになるように持ち替える。
(ふふ・・・、探したんだよ、これ・・・。おかげで限定モノを手に入れるのにどれだけ努力が必要かっ、よく分かったけれど、ね・・・)
手にとって、ゆっくりと知加子の元に向かう。最低限の隙間を空けて並んでいる背の高い電動書庫の横を通り抜けると、ぼんやりと非常灯の広い光りが、知加子の影を壁に投射しているのがところどころから見える。
苦しそうに身もだえする姿が視界に入り、それが次第に大きくなっていく。段ボールから取り出した袋から中身を取りだし、彼女の目の前の高さになるように持ち替える。
「知加子さん・・・どうです・・・?これ。イイでしょう?」
黒のトートバッグを、知加子の目の前に差し出し、得意気な表情で微笑む。知加子はまだ、それが何か、分からないようだった。
「あっ・・・ッ!・・・そ、それ・・・ッ・・・私の・・・」
「よく、分かりましたね。でも、不正解です。これは、私のモノ。貴方のものではないんですよ・・・」
バッグのファスナーを開け、中を知加子に見えるように開く。確かに、自分のものではないことは中身を見ればすぐに分かるはずだ。
「で・・・、でもどうして・・・?」
怪訝そうな顔で訊ねたことには答えず、さらにまた、バッグを差し出す。
「・・・それ・・・は・・・」
全く同じデザインのバッグが2つ、知加子の足下に並べられている。もちろん、一つは彼女自身のものである。
「さっき、ロッカーから、拝借させていただいたんですよ。もちろん、中身には、触ってませんから、安心してください」
足下の2つのバッグを交互に眺める知加子を、微笑みながら眺める。彼女にとって、こんな状況に困惑以外、どんな感情がふさわしいと言えるだろうか。
「どういう・・・つもりなの・・・、これは・・・」
「もちろん、意図があってのことです。今に、分かるでしょう。私の望みは、知加子さん、貴方を完全に私のものにしたい、それ以外の何でもない、ということです」
「・・・・・・」
真っ赤な顔をして俯く知加子の視線は、足下の自分のバッグに落とされている。
「いえ、正確に言えば、私が貴方になりたい・・・ということかも、しれませんが、ね・・・」
「えっ・・・?」
驚いたように視線を上げ、私を見つめる知加子の目に映ったのは、背を向けて部屋を出て行こうとする私の姿。
「ま、待ちなさいっ・・・、待って!!」
私は無言で、書庫の扉を開け、獲物を捕らえた檻にカギを掛け、緊張と昂奮で早まる鼓動を一旦落ち着けようと、喫煙室に向かってゆっくりと歩きながら、こみ上げてくる笑みをこらえることができなかった。
黒のトートバッグを、知加子の目の前に差し出し、得意気な表情で微笑む。知加子はまだ、それが何か、分からないようだった。
「あっ・・・ッ!・・・そ、それ・・・ッ・・・私の・・・」
「よく、分かりましたね。でも、不正解です。これは、私のモノ。貴方のものではないんですよ・・・」
バッグのファスナーを開け、中を知加子に見えるように開く。確かに、自分のものではないことは中身を見ればすぐに分かるはずだ。
「で・・・、でもどうして・・・?」
怪訝そうな顔で訊ねたことには答えず、さらにまた、バッグを差し出す。
「・・・それ・・・は・・・」
全く同じデザインのバッグが2つ、知加子の足下に並べられている。もちろん、一つは彼女自身のものである。
「さっき、ロッカーから、拝借させていただいたんですよ。もちろん、中身には、触ってませんから、安心してください」
足下の2つのバッグを交互に眺める知加子を、微笑みながら眺める。彼女にとって、こんな状況に困惑以外、どんな感情がふさわしいと言えるだろうか。
「どういう・・・つもりなの・・・、これは・・・」
「もちろん、意図があってのことです。今に、分かるでしょう。私の望みは、知加子さん、貴方を完全に私のものにしたい、それ以外の何でもない、ということです」
「・・・・・・」
真っ赤な顔をして俯く知加子の視線は、足下の自分のバッグに落とされている。
「いえ、正確に言えば、私が貴方になりたい・・・ということかも、しれませんが、ね・・・」
「えっ・・・?」
驚いたように視線を上げ、私を見つめる知加子の目に映ったのは、背を向けて部屋を出て行こうとする私の姿。
「ま、待ちなさいっ・・・、待って!!」
私は無言で、書庫の扉を開け、獲物を捕らえた檻にカギを掛け、緊張と昂奮で早まる鼓動を一旦落ち着けようと、喫煙室に向かってゆっくりと歩きながら、こみ上げてくる笑みをこらえることができなかった。
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