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Visions of Masochist
自分を律し、行き先を指し示す【Vision】。 しかし、行き先の分からない「背徳の幻想」が、私の中には存在する。
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誰の目にも見えない顔【02】
 「コドモ」の間にSMに魅せられた人は例外なく、自分の性的衝動を満たす「素材」を手にすることの難しさに嘆いたことがあるだろう。

 無意識に手に取ることができるマンガ雑誌には、ただただ扇情的なだけの興味本位のSM描写が入り混んでいる。フィルタリングソフトを導入していないPCを触ることができる「幸運な」環境を手に入れさえすれば、いまどきのコドモは、たやすくSMの世界へ足を踏み入れられるに違いない。

 大人になった私は、「コドモ」世界のあり方にいろいろ言いたくなる。

 もちろん、自分が通った道が正しいとは決して思っていない。本当はその年でしてはいけないことをしていたし、それが健全な心身の成長に、何らかの悪影響がなかったとは言い切れない。

 「コドモ」世界が私の世界の全てだった頃、私と同じような想いを持って、大人世界との間の高い塀を乗り越えた人なら、その頃に感じた甘苦い記憶が今も残っているだろう。何の障害もなく「SM素材」を手に入れられる今の環境がその頃にあれば、と思わなければ嘘だと思う。

けれど、「素材」が手に入ってしまえばまた、さらなる刺激を欲するスパイラルがはじまる。どの道を通っても、若すぎることに変わりはない。

 自分が「コドモ」の頃にした行動は、絶対に「大人の自分」のどこかの部分を創ったはずだと思う。そのことに思いを馳せつつ、昔の自分を振り返ってみたい。

 その頃、私は住んでいる街から電車で1時間ほどのところまで、友人とよくカジュアル服を買いに出かけていた。店が入っているビルは少し不思議な形で、ウナギの寝床のように縦長の店舗だったが、店の中程のところに、隣の店舗にそのまま入れる通路があった。

 私は、ジーンズや、Tシャツを眺めている振りをしながら、隣の店舗の奥の陳列棚へ視線を流していた。陳列棚には、大小様々のバイブレーターに、扇情的な下着、カセットテープやビデオテープが並び、さらに奥の棚には、鞭、蝋燭、革の拘束具、手錠や、浣腸器、乳首につける金具など、SMに使う道具が並べられているのが見えた。

(ここなら・・・止められることは無いはず・・・)

 「18歳未満入店禁止」と書かれた札の下をくぐらなくても、直接「大人のおもちゃ」の店舗に入ることができる。私が知る限り、この環境はここにしか存在しなかった。私は、その後数年にわたって、この店から、いくつもの「道具」を手に入れ続けた。

 「道具」とSMは、ある意味お互いが引き合う関係にあるように思う。もちろん、責める側と責められる側に、人間的な「何か」のつながりが盤石であったなら、特段の「道具」がなくても主従関係を表す行為で十分にSMが成り立つかもしれない。

 しかし、そこまでできないうちは、何かしかの道具を使って、「SM行為をしている」ことから始める方がきっと、昂ぶることができるのだろう。

 私は、何度もこの店に通い、他の手段で手に入れたビデオや小説の中に出てくる器具や道具を眺めながら、これらの道具を「本来の目的」で使用できる人が心の底から羨ましかった。

 「道具」を使いこなし、自分とパートナーのSM衝動を満たすことまで実現するには、そのころ、まだまだ少なくとも数年はかかるに違いない。その頃はインターネットで「同好の士」を見つけ、自分の身体の内側にあるMの衝動や妄想について話すこともできなかったから、私はただ、母が出かけ、一人になる時間をみつけるごとに、買い求めた道具を自分の身体に使い、その感触を身体で追い求めつづけていた。

 
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