「もう少し、かわいい格好にしてあげるね」
美恵は由梨の手首の縄を緩め、一旦戒めを解く。戸惑う由梨の額に軽くキスをすると後ろ手に縛りなおし、両肩を通したあと胸の下側を縛る縄に引っ掛け、もう1度背中の縄に掛けた。由梨の両胸がより強調され、拘束感が一段と厳しくなる姿勢だ。
美恵はさらに太い縄を取り出すと、背中の結び目に硬く縄を捲きつけ、梁に向かって縄尻を投げる。
(吊られるんだ・・・)
由梨が考えた瞬間、美恵は両腕に体重をかけて縄を一気に引く。
美恵は由梨の手首の縄を緩め、一旦戒めを解く。戸惑う由梨の額に軽くキスをすると後ろ手に縛りなおし、両肩を通したあと胸の下側を縛る縄に引っ掛け、もう1度背中の縄に掛けた。由梨の両胸がより強調され、拘束感が一段と厳しくなる姿勢だ。
美恵はさらに太い縄を取り出すと、背中の結び目に硬く縄を捲きつけ、梁に向かって縄尻を投げる。
(吊られるんだ・・・)
由梨が考えた瞬間、美恵は両腕に体重をかけて縄を一気に引く。
一歩一歩、近づいてくる足音に、鼓動が早まっていく。どんな表情でドアを開けるのか、そして、最初にどんな声をかけてもらえるのだろうか。一人で美恵の帰宅を待つ間、私の頭の中を支配していたのは、まぎれもなく美恵の姿なのだ。
待ち続けた時間の分だけ、私の中で美恵は様々な表情を見せていた。優しい表情、厳しい表情、そのどちらも、結局は想像でしかない。
(早く、早く美恵様の表情が見たい・・・)
一人で過ごす時間は、美恵に会いたいと願う時間である。その長い時間が、ドアの開く音と共に終わろうとしていた。
「ただいま!いい子にしてた?」
美恵が微笑みながら私を見つめる。
「御主人様、おかえりなさいませ・・・。」
正座してゆっくりと床に平伏する。
「もう・・・、いきなり御主人様、はやめて頂戴って言ってるでしょ?私は私、貴方は貴方。あんまりありきたりな感じにはなりたくないんだって・・・。」
「それにしても、今日は暑かったね、もうくたくた・・・。でも、由梨のことを考えて早足で帰ってきたの」
美恵の薄い唇から流れ出した言葉が、直接心に響き、途端に熱いものが身体の中に流れる。
(私に会うのを待ち遠しく思ってくれていたんだ。暑いのに早足で・・・)
そう考えるだけで、鼓動がこめかみのあたりまで伝わるような気がした。
「あ、ありがとうございます」
私は、そういうのがやっとだった。
「さぁて、楽しみにしてたから今日の私はしつこいかもね。できる?」
優しい笑顔の中のサディスティンが、私を見つめている。
「はい・・・。」
もう、まともに目を合わせることもできず、私はこれから始まるひとときの夢に、身体中を熱くするのだった。
待ち続けた時間の分だけ、私の中で美恵は様々な表情を見せていた。優しい表情、厳しい表情、そのどちらも、結局は想像でしかない。
(早く、早く美恵様の表情が見たい・・・)
一人で過ごす時間は、美恵に会いたいと願う時間である。その長い時間が、ドアの開く音と共に終わろうとしていた。
「ただいま!いい子にしてた?」
美恵が微笑みながら私を見つめる。
「御主人様、おかえりなさいませ・・・。」
正座してゆっくりと床に平伏する。
「もう・・・、いきなり御主人様、はやめて頂戴って言ってるでしょ?私は私、貴方は貴方。あんまりありきたりな感じにはなりたくないんだって・・・。」
「それにしても、今日は暑かったね、もうくたくた・・・。でも、由梨のことを考えて早足で帰ってきたの」
美恵の薄い唇から流れ出した言葉が、直接心に響き、途端に熱いものが身体の中に流れる。
(私に会うのを待ち遠しく思ってくれていたんだ。暑いのに早足で・・・)
そう考えるだけで、鼓動がこめかみのあたりまで伝わるような気がした。
「あ、ありがとうございます」
私は、そういうのがやっとだった。
「さぁて、楽しみにしてたから今日の私はしつこいかもね。できる?」
優しい笑顔の中のサディスティンが、私を見つめている。
「はい・・・。」
もう、まともに目を合わせることもできず、私はこれから始まるひとときの夢に、身体中を熱くするのだった。
秋の朝の清浄な空気が、白を基調にした明るい部屋の中に満ちている。
私は、私の御主人様が生活するこの空間が、自分を最も美しく演出してくれることを知っていた。
「由梨」になるために、身体から雄の匂いを消し去らなくてはならない。シャワーを念入りに浴び、体毛の処理をし、ドレッサーの前で目をつぶって自分の中の淫らな部分に火をつけていく一瞬が、とても心地よい。
「貴方のために、今日もキレイになります」
鏡の前で小さくつぶやくと、美恵のことを想った。
「由梨」は、彼女の主人である美恵が見つけ、美恵が育てた、美恵にしか価値のない「女奴隷」である。
私は、私の御主人様が生活するこの空間が、自分を最も美しく演出してくれることを知っていた。
「由梨」になるために、身体から雄の匂いを消し去らなくてはならない。シャワーを念入りに浴び、体毛の処理をし、ドレッサーの前で目をつぶって自分の中の淫らな部分に火をつけていく一瞬が、とても心地よい。
「貴方のために、今日もキレイになります」
鏡の前で小さくつぶやくと、美恵のことを想った。
「由梨」は、彼女の主人である美恵が見つけ、美恵が育てた、美恵にしか価値のない「女奴隷」である。
街でふとすれ違った女性や、たまたま電車で隣り合った女性に性的な欲情をかき立てられ、ふと浮かび上がる妄想。「常識ある大人」として、自分の頭の中に封じ込めておかなければいけない妄想を、敢えて展開してみたシリーズ。
- 妄想を展開する【01】
- 妄想を展開する【02】
- 妄想を展開する【03】
- 妄想を展開する【04】
- 妄想を展開する【05】
- 妄想を展開する【06】
- 妄想を展開する【07】
- 妄想を展開する【08】
- 妄想を展開する【09】
- 妄想を展開する【10】
- 妄想を展開する【11】
- 妄想を展開する【12】
- 妄想を展開する【13】
- 妄想を展開する【14】
- 妄想を展開する【15】
- 妄想を展開する【16】
- 妄想を展開する【17】
同じオフィスで働く同僚女性が発する甘い汗の薫りに惹かれ、彼女を倉庫に誘い出した私は、「彼女」を捕らえることに成功する。
梁から伸びる縄に両手首を絡め取られて吊られた姿でもがく「彼女」と「私」。
戒めを解くことを懇願し、それが叶えられないまま続く「私」の行為。
どこまでも焦がれた「彼女」自身の薫りを味わう「私」。その行為は「彼女」の想像した範囲を超えて続く。
自身が知らない感覚を「私」によって掘り起こされていく知加子。その狼狽が彼女の態度を変える。
困惑と狼狽に支配された知加子から離れ、「意図」をほのめかしながら姿を明滅させる「私」。
倉庫に一人残された知加子と、彼女を残して一人立ち去った「私」の意識はそれぞれに高まる。
再び知加子の前に戻る「私」。しかし、私自身もまた、このまま進むかどうかの煩悶に包まれていく。
知加子から数メートル隔てて姿を影に隠す私。ただならぬ雰囲気におびえる知加子と私。
「私」の姿は、知加子が想像すらしなかった形で目の前に現れて。
囚われ、恐怖に支配された知加子の「女」を掘り起こす「私」。
次第に、「私」の情念は知加子に認識され、さらにその困惑が広がり続ける。
「私」の戦利品、知加子の反応、私の想い。退くも、進むも、その道のりは全く見えなくなって。
「我」を忘れた「私」が、起こした嵐と失敗
失いたくない温もりと愛おしさが、知加子に本心を伝えることを拒んで。
「償い」を想う「私」。
後悔と自責の念に支配されて
【継続中】
「下ろして頂戴・・・、逃げたりしないから・・・。」
静寂に、静かに波紋を広げるような落ち着いた声で、知加子が私に呟く。どうして女性というのは、本当の修羅場になるとこんなに落ち着いていられるのだろうか。
さっきまで華奢なうめき声を上げ、苦痛に汗を滲ませ、崩壊寸前だったことが信じられない。
「知加子・・・、さん・・・?」
「貴方の話を聞きたくなったの。逃げてどこかに訴えるなんてしないから、ね・・・?本当に、腕が、もう限界なの・・・、これ以上このままだったら・・・、本当に腕が、ダメになりそうだから・・・」
今度は、私が逡巡する番だった。
静寂に、静かに波紋を広げるような落ち着いた声で、知加子が私に呟く。どうして女性というのは、本当の修羅場になるとこんなに落ち着いていられるのだろうか。
さっきまで華奢なうめき声を上げ、苦痛に汗を滲ませ、崩壊寸前だったことが信じられない。
「知加子・・・、さん・・・?」
「貴方の話を聞きたくなったの。逃げてどこかに訴えるなんてしないから、ね・・・?本当に、腕が、もう限界なの・・・、これ以上このままだったら・・・、本当に腕が、ダメになりそうだから・・・」
今度は、私が逡巡する番だった。